注文住宅への男女の想い

1.男性の場合

 注文住宅の営業をしていたことがあります。大抵の場合、ご夫婦でモデルハウスを見学に来て、それからご成約となり、何度かの打ち合わせを重ねた後、プランが出来上がり、そして、実際に建築が始まるという流れです。

 色んなご夫婦がいらっしゃると思いますが、こだわるポイントというのが男女でくっきり分かれ、しかも大抵の場合似たようなことを言われるから不思議です。男性の場合、小さくても良いから自分の書斎が欲しいと言います。そして、お風呂は広い方が良いと言うのも大抵の場合、男性。最近では、当たり前になって来ているダブルガラス、トリプルガラスなど、機能性のことを気にするのもほぼ旦那様の方で、女性で気にする方はほとんどいないというのも面白い特徴でした。

2.女性の場合 

 対する女性の方は、キッチンの使い勝手を言われます。キッチンに立つ時間が長いからこそ、使いやすさを気にされるのは、当然の事です。あと気にするのは、デザイン的なことでした。面白いぐらいに、男性は見た目より機能性、女性は機能性よりおしゃれさ、見た目の美しさなのです。夫婦の関係性は、千差万別だと思いますが、それだけは、ほぼどのご夫婦にも当てはまることで、モデルルームを案内しながら、その傾向を興味深く拝見していました。

3.そして理想の家は完成するのか?

 そうして、各々が自己主張をし、意見をぶつけあいながら(相談とは言いがたい)家は理想の形へ近づいていきます。でも、家族と言えど何人かの違う人間がそこに住むのです。お父さんのこだわった書斎は、間取りの関係上却下され、お母さんのこだわったキッチンは予算の関係上、ワンランク下の物に。と、それぞれの理想は100%ではなく、80%、下手をすれば50%ぐらいになったりもします。つまり、注文住宅だから、理想の家が手に入る訳ではないのです。なんなら、打ち合わせを重ねる度に仲が悪くなり、家が完成する頃には、離婚してしまったという夫婦も少なくありません。長い人生の中でマイホームを手に入れる方はたくさんいらっしゃると思いますが、結局、理想の家というのは、ものすごく莫大な資金を持つ、単身の方にしか手に入らないのかもしれません。

 一つ言えることは、全てが理想の家じゃなくても、1箇所でも自分の思い通りになったポイントがあって、そこを幸せと思える人に新築注文住宅は満足と幸せを与えてくれる物だと私は思っています。